自己免疫性GFAPアストロサイトパチーは,髄膜脳炎や脳脊髄炎を呈する新しい中枢神経系の炎症性疾患です.多くの患者さんはステロイド治療に反応しますが,重症化や再発を経験する患者さんもいます.しかし,炎症の強さや重症度,再発リスクを客観的に評価できるバイオマーカーは確立されていません.今回,当科の木村暁夫臨床教授らは,岐阜大学寄生虫学・感染学分野,福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座,聖マリアンナ医科大学脳神経内科,藤田医科大学医療科学部との共同研究により,GFAPアストロサイトパチーの新たな脳脊脳脊髄液バイオマーカーを発見し,Neurology誌に発表しました.
プレスリリース
https://www.gifu-u.ac.jp/news/research/2026/07/entry27-15227.html
まず,未治療のGFAPアストロサイトパチー患者4名と,非炎症性疾患である特発性正常圧水頭症患者4名の脳脊髄液について,92種類の炎症関連蛋白質を網羅的に解析しました.その結果,GFAPアストロサイトパチーで最も顕著に増加していたのが,tumor necrosis factor receptor superfamily member 9,TNFRSF9でした.TNFRSF9はCD137または4-1BBとも呼ばれ,主に活性化T細胞,とくにCD8陽性細胞傷害性T細胞に発現する免疫関連分子です.
続いて,GFAPアストロサイトパチー42名と,多発性硬化症,視神経脊髄炎スペクトラム障害,抗NMDA受容体脳炎,細菌性髄膜炎,特発性正常圧水頭症の計60名を対象に,脳脊髄液TNFRSF9濃度を測定しました.その結果,GFAPアストロサイトパチー群では,すべての疾患対照群より有意に高値でした(図上).GFAPアストロサイトパチーにおける治療前のTNFRSF9濃度中央値は62.1 pg/mLであったのに対し,他疾患ではおおむね39~45 pg/mLでした.さらに,免疫治療後には44.1 pg/mLまで有意に低下しました(図下).つまりTNFRSF9は,GFAPアストロサイトパチーで上昇するだけでなく,治療に伴う病勢の変化も反映する可能性があります.
TNFRSF9高値は,脳脊髄液細胞数,蛋白濃度,ADA値の上昇と関連し,入院時の神経障害が重い患者さんや意識障害を伴う患者さんでも高値でした.さらに,特徴的なMRI所見である血管周囲線状造影を認める患者さんや,その後に再発した患者さんでも高値でした.TNFRSF9は炎症性サイトカインであるIL-6やTNF-α,アストロサイト障害を示すGFAPとも相関しており,免疫活性化とアストロサイト障害の両方を反映している可能性があります.
以上から,脳脊髄液TNFRSF9は,GFAPアストロサイトパチーの炎症活動性,重症度,治療反応性,再発リスクを評価する新たなバイオマーカー候補と考えられます.また,TNFRSF9を介したT細胞活性化が,本疾患の病態に関与する可能性も示唆されます.病態解明を進展させるだけではなく,新たな治療標的の探索や治療法の確立につながることが期待されます.ただし,本研究は後方視的で症例数も限られているという限界があります.今後,前向き多施設研究による検証と,臨床的に有用な基準値の確立が必要です.
Kimura A, Takekoshi A, Maekawa Y, Tanaka K, Yamano Y, Saito K, Takemura M, Yamamoto Y, Shimohata T. Involvement of TNFRSF9 in the Pathogenesis of Autoimmune Glial Fibrillary Acidic Protein Astrocytopathy. Neurology. 2026 Aug 11;107(3):e218306. doi: 10.1212/WNL.0000000000218306.
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https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/graduate/









