医学と医療

科学者たる医師は宗教にどう向き合うか@「医師こそリベラルアーツ!」連載第12回

「医師こそリベラルアーツ!」の連載第12回が,日経メディカル「Cadetto.jp」にて公開されました.これまで岐阜大学で開催してきたリベラルアーツ研究会のミニレクチャーを紙面上に再現したもので,医師・医学生の皆さんには,会員登録をすれば無料でお読み…

「脳卒中の巨人が見抜いた末梢神経疾患―Miller Fisher症候群」@Brain Nerve連載「原著・過去の論文から学ぶ」より

「Miller Fisher症候群」の患者さんが入院すると,若いドクターに,「病名の由来は,Miller Fisher先生?それともMiller先生とFisher先生?」と質問します(笑).答えは前者で,つぎに「Miller Fisher先生は脳卒中の大家ということは知ってた?」というと皆…

神経恐怖症から神経不安へ:医学生・医療者に広がる「不安」を教育でいかに克服するか?

「neurophobia(神経恐怖症)」という言葉があります.1994年にJozefowiczが提唱した有名な言葉で(文献1),医学生が「神経学を複雑で難しい」と感じ,恐怖・不安・嫌悪・無関心を抱く現象を指します.約半数の医学生が経験し,基礎課程では神経科学への恐…

ChatGPT時代の医師教育 :学びを支えるか,奪うかの境目は?

ChatGPTのような大規模言語モデル(AI)が,医療の現場にどんどん入ってきています.とても便利ですが,いいことばかりではありません.私自身,「若い先生の方がAIの影響を強く受けるのではないか」と漠然とした懸念を持っていましたが,先日読んだ New Eng…

NHK「知的探求フロンティア タモリ・山中伸弥の!?(びっくりはてな)」に出演します!

標題の新番組の第2回放送「認知症 克服のカギ」に出演させていただきます.昨年からチーフディレクターの方々にレクチャーする機会をいただき,番組制作のお手伝いに関わってきましたが,正直どのような番組になるのか分からないまま進めていました.まさか…

講義「打腱器の歴史」

岐阜大学では年間20数回の専門医向け「神経症候学」の講義を行っていますが,今回は少し脱線して「打腱器の歴史」の講義をしました.新作ですが,きっかけは,最近入手したソ連製のヴィンテージ打腱器でした.回診のときにみんなに見せたところ,若手のひと…

患者と目を合わせない医者たち(新潮新書)

昨日のカンファレンスで教室のみんなに紹介した里見清一先生(本名,國頭英夫先生)の新刊です(https://amzn.to/462rblW).里見先生は呼吸器内科とくに肺癌の診療を専門とするドクターです.10年ほど前ですが,日本臨床倫理学会で,会場大爆笑,でも一番考…

医療AIで医師に「デスキリング(deskilling)」が起きる!:AIツール導入後わずか数か月で熟練内視鏡医の技能が低下する

近年,AIを用いた医療用ツールはさまざまな分野に導入されています.先駆的な例として大腸内視鏡検査があり,AI支援によって腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)が向上することが多くのランダム化比較試験で示されています.一方,AIの使用が医師自身…

医療者が⾝に付けるべき「リーダーシップ」とは @「医師こそリベラルアーツ!」連載第10回

「医師こそリベラルアーツ!」の連載第10回が,日経メディカル「Cadetto.jp」にて公開されました(https://x.gd/KvnYH).これまで岐阜大学で開催してきたリベラルアーツ研究会のミニレクチャーを紙面上に再現したもので,医師・医学生の皆さんには,会員登…

シャルコー生誕200年記念シンポジウムに参加して

第19回パーキンソン病・運動障害疾患コングレス(大会長:都立神経病院 高橋一司先生)にて,「シャルコー生誕200年記念シンポジウムに参加して」と題した講演をさせていただきました.今月7月1日から5日にかけて,私はパリで開催された「シャルコー生誕200…

マイハンマー 2025(No 35-38) ―パリとメルカリで入手した新種?のハンマー―

私は診察用ハンマー(打腱器)を集める趣味があります.3年前にブログで紹介したときの写真を見ると19本,一昨年は27本,昨年は7本増えて34本でした(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2024/08/27/075319).意識して探してもさすがに最近は新しいも…

「臨床神経学」誌の名前の由来をご存知でしょうか?

「臨床神経学」誌は,日本神経学会が発行する月刊の神経学雑誌です.その名称の由来を,今月号の編集後記に執筆しました.よろしければご一読ください. ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 編集後記 本誌の名前が「臨床神経学」となった…

米国神経学会年次総会(AAN2025)参加報告会

当科では,入局1年目の目標として,症例報告の経験を積むことと,米国神経学会(AAN)での発表に挑戦することを掲げています.AANでの発表はハードルが高いものの,私自身が入局1年目に初めて海外学会に参加し,大きな感動と刺激を受けた経験があるため,そ…

医師介助自殺に対するイタリア神経学会の見解 ―我が国が参考にすべきこと―

Neurological Sciences誌に,神経疾患患者における医師介助(幇助)自殺(Physician-Assisted Suicide;PAS)について,イタリア神経学会が包括的に論じたポジションペーパーが発表されました.非常に重要な論文だと思いました. まず背景ですが,イタリアで…

驚愕の方法による「ヒト脳ミトコンドリア地図」の完成!―進化的に新しい領域はミトコンドリアが高性能―

私たちの脳は膨大なエネルギーを消費しながら活動しています.このエネルギーは主にミトコンドリアによる酸化的リン酸化(OXPHOS)によって供給されています.このためミトコンドリアの機能は神経活動や神経疾患にも深く関わっています.今回,コロンビア大…

グリンパティックシステムを可視化する―血管周囲造影効果(PVE)パターンという新たな画像サイン

図1はJ Neuroradiol誌にフランスから発表された総説からのものです.近年注目されている血管周囲造影効果(perivascular enhancement: PVE)パターンについて豊富な画像とともに詳細に解説しています.まず図の中央には,T1強調造影MRIにおける典型的なPVE…

知っておきたい成人ADHD(注意欠如・多動症)の診かた,5つのポイント

Neurology Clinical Practice誌の論文です.いままで成人のADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder;注意欠如・多動症)患者さんを診察室で見逃していたのかもと思いました. ADHDは子どもの病気という印象が強いですが,成人になって初めて診断され…

神経学的所見に名を残すワルテンベルグの非倫理的な行動

ハレルフォルデン・スパッツ病(現在の「パントテン酸キナーゼ関連神経変性症=PKAN」)は,ドイツの神経学者ユリウス・ハレルフォルデン(Julius Hallervorden, 1882–1965)とヒューゴー・スパッツによって記載された疾患です.この病名は倫理上の深刻な問…

病状説明 update ─ 協働意思決定,性差医療,新規治療@Brain Nerve誌2025年3月号

編集委員として構想を練った企画した特集号がいよいよ刊行の運びとなりました.本特集は,若手医師のみならず,経験豊かな先生方にとっても,臨床の現場でお役に立つものと確信しております. 近年,神経疾患における患者・家族への病状説明が複雑化し,難し…

『Annual Review 神経 2025』予約開始のお知らせ

伝統ある『Annual Review 神経』は,本年で40周年の節目を迎えます.この記念すべき年に,鈴木則宏先生ら前編集委員よりバトンを引き継ぎ,矢部一郎先生,杉江和馬先生,中島一郎先生,堀江信貴先生とともに,新たな編集委員として携わることとなりました. …

蒲原宏先生と「ヒポクラテスの木」の思い出

新潟大学の先輩であり,岐阜大学における「ヒポクラテスの木」植樹に多大な尽力をしてくださった整形外科医,蒲原宏先生がご逝去されました.訃報に接し,深い哀しみとともに,先生との思い出が蘇ってきます. 「ヒポクラテスの木」は,ギリシャのコス島にあ…

学んで身につけよう「リーダーシップ」@日本神経学会キャリア形成促進委員会ウェブセミナー

日本神経学会ではキャリア形成促進を目的とした委員会を組織し,バーンアウト対策などのウェブセミナーを行ってまいりました.本年度2回目のテーマは「リーダーシップ(オーガナイザー:海野佳子先生)」です!「リーダーシップ」は米国神経学会をはじめ多…

医療は理系なのか,文系なのか? @「医師こそリベラルアーツ!」連載第9回

「医師こそリベラルアーツ!」の連載第9回が,日経メディカル「Cadetto.jp」にて公開されました(https://tinyurl.com/26j4tq35).これまで岐阜大学で開催してきたリベラルアーツ研究会のミニレクチャーを紙面で再現しています.医師・医学生は会員登録のう…

三浦謹之助先生の葉書

私はJean-Martin Charcot先生の晩年の弟子であり,日本の近代医学の父と言われる三浦謹之助先生(1864~1950)にとても関心を持っています.とくにおふたりの師弟関係に注目し,書籍や文献を読みました(ブログ参照).今年はシャルコー生誕200年の記念の年…

マイクロプラスチックは脳に高濃度で蓄積し,とくに認知症患者でその濃度が著しく高い!!

近年,環境中のマイクロナノプラスチック(MNPs)が健康に及ぼす影響について注目が集まっています.2023年3月,New Engl J Med誌に掲載されたイタリアの前方視的研究では,頸動脈の動脈硬化病変(プラーク)を切除する頸動脈内膜切除術を受けた312人のうち…

味覚性発汗とFrey症候群とホロコースト

朝のカンファレンスで,味覚性発汗(gustatory sweating)とFrey症候群について議論しました.まず味覚性発汗とは味覚刺激により顔面に発汗が生じる現象で,一部の健常者には生理的味覚性発汗が認められますが,耳介側頭症候群(Frey 症候群)や交感神経切除…

哲学を通した「幸せ」の追求を@「医師こそリベラルアーツ!」連載第8回

「医師こそリベラルアーツ!」の連載第8回が,日経メディカル「Cadetto.jp」にて公開されました(https://tinyurl.com/26a33w8e).いままで岐阜大学にて31回のリベラルアーツ研究会を開催しましたが,各回で行なった私のミニレクチャーを紙面で再現する企…

AIモデルに「認知機能検査」をして分かったその弱点@BMJクリスマス論文より

世界五大医学誌の一つBMJ誌は,毎年,クリスマスの時期になるとイグノーベル賞を凌駕するような面白論文の特集号を公開します.今年の原著論文は4つで,変形性手関節症患者の手指機能に対する電気加熱ミトンの効果を調べた論文や,タクシー運転手と救急車運…

ダークチョコレートを食べて2型糖尿病を予防しよう!

世界最高峰の医学誌の一つBMJ誌のクリスマス号は,毎年,面白論文を掲載することで知られています.そろそろ掲載されたかなとHPを眺めたところ,まだ早かったようですが,これはクリスマス号の論文かしら?と思ってしまうような論文が掲載されていました.チ…

神経学者としてのレオナルド・ダ・ヴィンチ@「芸術家と神経学Ⅱ」(医学書院Brain Nerve誌)

普段とは異なる神経学の一面を楽しんでいただくために開始したクリスマス特集も,本年で4回目を迎えました.今回は初回の2021年12月号に特集した「芸術家と神経学」の続編をお届けします(Amazonへのリンク https://amzn.to/4gucURv). 私はレオナルド・ダ・…