自己免疫性脳炎

自己免疫性小脳失調症の多様性と診断@第16回日本小脳学会学術大会

第16回日本小脳学会学術大会(大会長;星野幹雄先生)にて,標題の特別講演の機会をいただきました.脊髄小脳変性症と診断された患者の中に含まれている可能性がある,免疫療法が有効な「自己免疫性小脳失調症(ACA)」をいかに見出すかについて,当科の取り…

関節リウマチに対するTNF-α阻害薬(ゴリムマブ)治療中に生じた自己免疫性小脳失調症

当科からの症例報告です.これまでに報告のない,関節リウマチに対するTNF-α阻害薬ゴリムマブ(シンポニー®)使用後に発症した自己免疫性小脳失調症(ACA)の臨床像と病態を検討したものです. 関節リウマチではTNF-αを中心とする炎症性サイトカインが関節破…

IgLON5抗体関連疾患は,なんと「核」から始まる!! ― 抗体の神経細胞への結合が核内タウ異常を引き起こす

IgLON5抗体関連疾患は,自己免疫性脳炎と神経変性疾患の境界に位置づけられる,稀ながらきわめて重要な神経疾患です.IgLON5抗体が存在し,臨床的には球麻痺,REMおよびnon-REMパラソムニア,進行性核上性麻痺(PSP)や多系統萎縮症(MSA)様の運動障害,自…

自己免疫性小脳失調症の新規抗体TMEM132A抗体を同定しました!

最近,抗体関連神経疾患(自己免疫性脳炎および傍腫瘍性神経症候群)1,140例を検討したオランダの後ろ向き観察研究で,運動異常症は全体の42%に認められ,最も多いものは小脳性運動失調(51%)であったと報告されています(PMID: 41270249).よって孤発性…

「自己免疫性精神病」を独立した疾患単位とみなすべきではない!

Journal of Clinical Investigation誌の最新号に掲載された総説です.抗NMDA受容体脳炎の発見者であるJosep Dalmau教授らが,「自己免疫性精神病(autoimmune psychosis)」という概念を独立した疾患として扱うべきではないと明確に述べています. 著者らは…

脳脊髄液オリゴクローナルバンドの意義 ―バンドの本数をどう解釈するか?―

オリゴクローナルバンド(oligoclonal bands:OCB)は,脳脊髄液にのみ存在する複数のIgGバンドのことで,髄腔内免疫グロブリン産生を示す指標です(図1上).多発性硬化症(MS)の診断において重要なバイオマーカーであり,「脳脊髄液に特異的なバンドが2本…

REM睡眠が7割を占めた過眠症;Ma2抗体関連脳炎と気づけるか?

Ma2抗体関連脳炎は稀な自己免疫性の傍腫瘍性神経症候群であり,視床下部が障害されると続発性ナルコレプシーを呈することがあります.今回紹介するスペインからの症例報告は,ポリソムノグラフィー(PSG)が診断の決め手となった一例です. 患者は72歳男性で…

GFAPアストロサイトパチーとナルコレプシー:アストロサイト障害による可逆性睡眠覚醒障害

当科の森泰子先生らと,筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の神林崇先生らと共同で,自己免疫性GFAPアストロサイトパチー(GFAP-A)に伴ってナルコレプシー1型(NT1)を発症した稀な症例を報告しました.GFAP-Aは,脳脊髄液中にGFAP-α抗体が検出される自己…

自己免疫性タウオパチーとしてのIgLON5抗体関連疾患:脳幹優位の萎縮パターンとその意義

希少疾患であるため12か国が結集して取り組んだ国際共同研究で,日本からは私ども岐阜大学が参加し,Brain誌に掲載された論文です.IgLON5抗体関連疾患は,自己免疫性脳炎の一種であり,睡眠障害,運動異常症,球麻痺,認知機能障害などを呈する多彩な臨床像…

脳内の異常を免疫系はどのように感知しているのか?― 「脳免疫コード」という新たな概念

私たちの脳は,これまで免疫系から独立していると考えられていました.しかし近年の研究により,脳内の老廃物を排出する仕組みとして,グリンパティック系(glymphatic system)および硬膜リンパ管(meningeal lymphatics)が存在することが明らかになり,脳…

未知の脳炎「GFAP-IgG様抗アストロサイト抗体陽性自己免疫性脳炎」の特徴 from 岐阜大学

自己免疫性GFAPアストロサイトパチーは,2016年にMayo clinicのグループが,アストロサイトに豊富に発現する中間径フィラメントの1つであるGlial fibrillary acidic protein (GFAP)に対する自己抗体(GFAP抗体)を有する髄膜脳炎・髄膜脳脊髄炎として報告し…

なぜIgG4抗体が主役となる自己免疫疾患でIVIgが効きにくいか?

自己免疫性ノドパチーなど,IgG4抗体が関与する自己免疫疾患に関する総説がNeurol Neuroimmunol Neuroinflamm誌に公開されています.IgG4抗体による自己免疫疾患の病態機序,そしてその病態に合わせた免疫療法として何が最適かを解説しています.結論を言う…

典型的なPSP/CBS症例にはIgLON5抗体関連疾患はまず含まれていない!ではどのような時に疑うか?

ご紹介する論文は,本邦の多施設共同研究「JALPAC(Japanese Longitudinal Biomarker Study in PSP and CBD)」の一環として行われた研究で,進行性核上性麻痺(PSP)や大脳皮質基底核症候群(CBS)の診断基準を満たす症例におけるIgLON5抗体関連疾患の頻度…

抗NMDA受容体脳炎を再現する動物モデルの確立と治療効果の評価

明けましておめでとうございます.本年もどうぞ宜しくお願いいたします.自分にできること,行うべきことを地道に頑張っていきたいと思います. さて新年最初に注目した論文は,将来,当科でもこのような研究をしたいという初夢を思い描いた研究です.抗NMDA…

進行性核上性麻痺(PSP)様の症候を呈する自己免疫性脳炎と傍腫瘍性神経症候群を見逃さないために注意すべきこと

ご紹介する論文は当科の大学院生,山原直紀先生が初めて挑戦して英文総説です.共著者も意見をしたりチェックをしたりしましたが,ほぼ自分で書き上げて立派なものだと思いました.進行性核上性麻痺(PSP)は核上性注視麻痺,姿勢保持障害,パーキンソニズム…

抗LGI1脳炎はfacio-brachio-crural dystonic seizureやdrop attackに伴う転倒を約1/4の症例で来たしうる!

抗LGI1脳炎はてんかん発作,意識障害,認知機能低下,低Na 血症,睡眠障害(パラソムニア,不眠症,過眠症)などを呈する急性の自己免疫性脳炎です.Neurol Clon Pract誌に米国Mayo Clinicから,臨床をしっかり見ていて流石だなぁと思った論文が掲載されてい…

IgLON5抗体関連疾患の最近の進歩

Curr Opin Neurol誌にIgLON5抗体関連疾患の最新の知見に関する総説が報告されていますので以下にまとめます. 1)臨床 ◆慢性の経過をとること(ただし25%は亜急性)に加え,MRIの信号異常(5%未満),脳脊髄液の細胞増多(20~30%),蛋白の軽度上昇(40…

血糖自己記録ノートへの書き込みが顕著に増えた1型糖尿病では自己免疫性脳炎を疑う

当科の山原直紀先生らによる症例報告がNeurol Clin Neurosci誌に掲載されました.膵島関連自己抗体である抗GAD抗体は1型糖尿病の診断に役立ちます.GAD,すなわちglutamic acid decarboxylaseは,グルタミン酸からGABAを産生する際に必要な酵素ですので,抗G…

画像異常パターンから自己免疫性脳炎を早期に発見し治療する!

最新号のNeuroradiologyに臨床上,とても役に立つと思われる模式図が掲載されています.自己免疫性脳炎の画像所見を6群(辺縁系型,線条体型,血管周囲造影型,間脳/脳幹型,大脳皮質型,MRI異常なし)に分けて,それに対応する自己抗体と鑑別診断を示して…

多系統萎縮症の鑑別診断としてのIgLON5抗体関連疾患

岐阜大学に異動し取り組んだことのひとつが「変性疾患と診断してきた症例の中に,治療可能な自己免疫性脳炎が含まれている」という仮説を検証し,免疫療法で治療することでした.ただ自己免疫性脳炎の経過は教科書的に「急性~亜急性」ですので,「慢性」に…

IgLON5抗体関連疾患のゲノムワイド関連解析とHLA関連解析から迫る病態機序

私どもも協力したIgLON5抗体関連疾患に関する研究がBrain誌に報告されました.本症のHLA関連解析としては最大規模の報告で,研究の強みは複数の異なる民族の患者を組み入れたことです.研究を主導したスタンフォード睡眠医学センターEmmanuel Mignot教授には…

Ma2抗体の標的抗原は進化の過程でウイルスから取り込まれ,いまだにウイルス様粒子を産生することで傍腫瘍性症候群をきたす

最新号のCell誌の驚きの論文です.傍腫瘍性神経症候群(PNS)は,担癌患者に合併する神経障害のうち,免疫学的機序により生じる多様な症候群です.さまざまな自己抗体が出現しますが,そのなかでMa2抗体は精巣腫瘍,非小細胞肺がんに認めることが多く,細胞…

小児の自己免疫性脳炎の自己抗体のレパートリーは成人とまったく異なる

スペインのJosepDalmau教授のグループから,自己免疫性脳炎が疑われる18歳未満の小児における抗神経抗体の種類と頻度を検討した研究が報告されています.2011年からの10年間で血清または脳脊髄液を検査した急性散在性脳脊髄炎以外の自己免疫性脳炎が疑われた…

近未来の脳神経内科はCAR-T細胞を駆使する ―抗NMDAR脳炎への応用―

自己免疫脳炎の代表的疾患である抗NMDAR脳炎は,精神症状,記銘力障害,痙攣発作,運動異常症,意識障害,中枢性低換気などを呈する若年女性にみられる脳炎です.急性期から積極的な免疫療法を行うことが重要で,第1選択療法でうまくいかないとき,速やかに…

長期間の原因不明の髄膜炎の鑑別診断として抗NMDA受容体脳炎も考慮する

当教室の山原直紀先生らによる抗NMDA受容体脳炎に関する症例報告です.脳炎に先行して,症例1は60日,症例2は22日間の髄膜炎症状(発熱,頭痛)を認めました.抗菌薬やアシクロビルなどによる治療が行われましたが無効でした.当院に紹介され,脳脊髄液抗N…

非定型パーキンソニズムを呈する自己免疫性脳炎/傍腫瘍性神経症候群 ―スコーピングレビュー―

8月号の「臨床神経」誌に当科から2つの論文が掲載されます.1つ目は専攻医,山原直紀先生とともに,大量の論文を精読して執筆した論文です.先日,開催されたMDSJ@大阪の教育講演・ポスター発表で報告し,反響を頂いた内容です.ちなみにスコーピングレ…

症候から自己抗体を推定する際,とても役に立つFigure

自己免疫性脳炎の研究は非常に大きな進歩を遂げています.抗神経抗体は細胞表面抗原と細胞内抗原を認識する抗体に大別されますが,前者は治療可能性が高いことから見逃さないことが重要です.さらに後者でもGFAP抗体やKLHL11抗体のように比較的免疫療法が奏…

PSP類似の非定型パーキンソニズムを呈し免疫療法が有効であった自己免疫性脳炎の1例

当初,肺炎を合併した進行性核上性麻痺(PSP)と考えられましたが,じつは自己免疫性脳炎であった症例を大野陽哉先生らが報告しました. 81 歳男性が発熱し,その3週間後に意識障害,4週間後に筋強剛,運動緩慢を呈しました.レボドパは無効で体軸性の筋強剛…

自己免疫性脳炎・関連疾患ハンドブック先行販売です!@第120回日本内科学会総会

昨日から開催されている第120回日本内科学会総会の書籍販売コーナーでご覧いただけます(図左).368ページ,ずっしり重いです.高級紙のせいもありますが,自己免疫性脳炎の領域の近年の進歩が顕著で(図右上),これほどの情報量があるということかと思い…

「自己免疫性脳炎・関連疾患ハンドブック」予約開始です!

自己免疫性脳炎に関連する新たな自己抗体がつぎつぎに同定されています.これに伴い,新たな疾患概念が確立されています.さらにこれらの疾患はさまざまな臨床像を呈しうることも判明し,これまで認知症,精神病,てんかん,小脳性運動失調症,運動異常症,…