その他

猫同士,276の表情をつかってコミュニケーションをする

Science Newsに,標題の論文が紹介されていました.私は「猫派」で,2匹の猫(キキとレオ)のパパなので興味深く読みました.今回初めて知ったのですが,猫同士は通常ニャーと鳴かず,人間にだけ鳴くそうです(適応と進化により発達した戦術らしい).では猫…

外傷後の脳浮腫をアドレナリン受容体拮抗薬で治療する!

外傷性脳損傷(traumatic brain injury;TBI)において,脳浮腫は重症度や死亡率に影響を及ぼすためその治療は重要です.私は知らなかったのですが,TBI後にノルアドレナリン濃度が上昇し,その上昇幅は重症度と死亡の可能性の予測因子となることが知られて…

がんを神経から治療する! -cancer neuroscienceという新しい領域―

最新号のNature誌に「がんを移植したマウスにα2アドレナリン受容体刺激剤(クロニジン)を大量投与するとガンの増殖を強く抑えることができる」というベルギーのからの論文が出ています.α2アドレナリン受容体は「交感神経活動のネガティブ・フィードバック…

感謝1000万ビュー -印象に残るブログ投稿20-

拙ブログのアクセス欄を見たら,1000万ビューを超えておりました.約20年かけて1079回投稿していました.最初の投稿は2004年で,留学中でした.脳梗塞の基礎研究を行っていましたが,臨床の勉強も続けねばと読んだ論文を備忘録代わりに書き始めたのがブログ…

巨細胞性動脈炎の血管病変はFDG-PETで評価する

最近,巨細胞性動脈炎の血管病変のFDG-PETによる評価の有用性を示す論文が複数,目に付きました.まず基礎知識を整理すると,巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis;GCA)は高齢者にみられる大型から中型の血管を侵す疾患です.大動脈とその分枝,頸動脈や…

抗IgLON5抗体関連疾患の臨床像(総説)

当科にて抗体アッセイ系を確立し,最近,お問い合わせが増えている抗IgLON5抗体関連疾患の総説を執筆しました.病理学的にタウの沈着を認めることから,自己免疫性タウオパチーとも呼ばれている疾患です.睡眠障害型,球麻痺症候群,運動異常症型など表現型…

統合失調症は神経解剖学的に2つのサブタイプに分類される-機械学習の威力-

脳神経内科疾患ではないが,Brain誌に興味深い論文が報告されたので紹介したい.統合失調症は,主に急性期に見られる陽性症状(妄想や幻覚など),消耗期に見られる陰性症状(無表情,感情的アパシー,活動低下,会話の鈍化,ひきこもり,自傷行為など),そ…

新たな髄膜脳脊髄炎「自己免疫性GFAPアストロサイトパチー」についての検討

髄液抗GFAPα抗体が陽性で,ステロイド治療が奏功する新たな疾患「自己免疫性GFAPアストロサイトパチー」が報告されている(JAMA Neurol 2016; 73: 1297-1307;Ann Neurol 2017; 81: 298-309).この疾患の臨床像はステロイドを含めた免疫療法が有効な髄膜脳…

Redundant Nerve Roots signは腰椎脊柱管狭窄症の予後不良因子である

Redundant Nerve Roots (RNR;余剰神経根)は,MRI T2強調画像で,馬尾のあたりが図のように曲がりくねり,一部,点状にも見える所見である.水平断では横に走行する馬尾を認めることから,矢状断で点状に見える理由が分かる. 歴史的には1960年代の終わり,…

髄液プログラニュリンは,中枢神経における腫瘍転移の有望な診断バイオマーカーである

中枢神経への腫瘍の転移を正確に診断することは,予後の推定と適切な治療のためには非常に重要である.しかし早期診断は非常に難しい.通常,その診断は画像検査や髄液診断にて行うが,これらの方法では感度,特異度に問題がある.このため,髄液を用いたバ…

アルコールによる健康被害はワイングラスを小さくして防ぐ!?(BMJ誌クリスマス論文)

恒例のBritish Medical Journal(BMJ)誌のクリスマス特集号の論文で,ケンブリッジ大学からの報告を紹介したい.アルコールは多くの疾患の危険因子である.イギリスでは近年,アルコール消費量が増加傾向にある.この原因として,製造や流通,ライフスタイ…

中枢性低体温症では,鳥肌や悪寒に着目する!

岐阜大学神経内科・老年学の林祐一講師が,中枢性低体温症を呈した症例を2報,症例報告している. 1)患者さんの様子がおかしいときには体温の測定も忘れずに行う! 2)低体温時には鳥肌(立毛筋反射)や悪寒を確認し,ない場合には中枢性低体温症を疑う!…

抗菌薬は入院中のせん妄の原因になる -抗菌薬関連脳症に注意-

せん妄は入院中,しばしば認められる合併症である.薬物が原因となることも多いが,抗菌薬に関連した「抗菌薬関連脳症(antibiotic-associated encephalopathy:AAE)」についてはあまり認識されていない.今回,AAEについての臨床,画像,電気生理学的所見…

400万ビューを超えていました

アクセス欄を見たら,今日,400万ビューを超えておりました.多くの方に読んでいただけているのだと改めて驚きました.留学中であった2004年に,臨床の勉強も続けようと,読んだ論文を備忘録代わりに書き始めたのがきっかけでした.ラットの手術をしながら待…

低血糖脳症 ―動物モデルの確立と治療を目指して―

糖尿病の治療は,食後高血糖を是正することを目的として行われる.治療薬として,インスリン注射や種々の血糖降下薬が用いられる.しかし誤って大量に使用する,ないし,食事量が減少すると,低血糖の状態になり,とくに血糖値が20 mg/dl以下になると重篤な…

パンケーキは術後も消えずに残る  ―頚椎症性脊髄症の特異的なガドリニウム造影所見―

頚椎症性脊髄症は,ミエロパチーの原因としては頻度が高い(23.6%という報告がある).圧迫が高度な場合,治療として外科的に除圧術が行われるが,手術に踏み切るのは正確な診断が必要で,その場合,画像所見は重大な意味をもつ.頸部の頚椎症性脊髄症に対す…

手術麻酔の神経合併症

全身麻酔に伴う神経合併症はしばしば経験するばかりではなく,ときに重篤である.神経内科医は術後にコンサルトを受けることが少なくなく,かつそれが手術に伴う脳梗塞などの合併症か,麻酔薬自体によるものか判断する必要がある.Neurology Clinical Practi…

低血糖脳症の予後を予測する因子

1.低血糖脳症は高齢化社会において取り組むべき重要な疾患である 低血糖症は血糖値の低下により神経症状をきたす状態で,一般的には血糖値が60mg/dL以下になる場合を指す.710万人と言われる日本人糖尿病患者のうち,年間0.3%(2万人!)の頻度で低血糖症…

低栄養患者における低血糖発作後の治療 ―低血糖脳症と鑑別すべき病態―

学会の症例提示で,神経性食欲不振症患者における低血糖発作後の遷延する意識障害についての報告があった.低血糖脳症が原因として鑑別に上がるが,同時にrefeeding症候群についても考える必要がある. Cf; Refeeding症候群の症候 電解質異常(低カリウム血…

第42回 新潟神経学夏期セミナーのご案内

来る8月3日(金)~5日(日),新潟神経学夏期セミナーが開催されます. 今回のセミナーのテーマは「脳は変化する-発生から可塑性まで-」「睡眠・リズム障害と神経疾患」です.それぞれ4日と5日に行われます. 当研究所に加え,国内の最先端の研究に触…

Painful legs and moving toes 多数例の報告

Painful legs and moving toes(PLMT)は,なかなか日本語の病名に訳しにくいが,「つま先の不随意運動と下肢の疼痛」を呈する疾患である.その病名は,神経内科医にとってはお馴染みであるものの,多数例の報告はなく(多くても20例未満),その臨床像や予…

脳の性分化と同性愛

Pride Celebrationはサンフランシスコ最大のお祭りで,いわゆるゲイ・パレードのことだ.ゲイ(gay)とは同性愛の人々,とくに男性同性愛者を意味する.留学中,このパレードを見学に出かけたことがある.参加者全員がゲイというわけではないそうだが,非常…

役に立った本 2011

今年,役に立った実用書を記載しておきたい.まず,プレゼンテ―ション関連の本をいくつか紹介したい.実は今年,学会などのプレゼンテーションをいろいろ工夫してみた.そのきっかけになったのはまずこの本. ガー・レイノルズ シンプルプレゼン 同じ著者に…

抗NMDA受容体抗体陽性脳炎の再発

過去にも本ブログで取り上げた抗NMDA受容体抗体陽性脳炎(1,2)は,主に小児や若年女性に生じる疾患である(稀ながら男性でも発症しうる).精神症状に引き続き,痙攣,意識障害,言語障害,口部,顔面を中心とする多彩な不随意運動を主徴とする.呼吸不…

放射線の健康への影響 児玉龍彦氏発言 (ぜひ動画を見てください)

東大アイソトープ総合センター長の児玉龍彦氏が,衆議院厚生労働委員会で行なった「放射線の健康への影響」についての魂の発言です.原発事故に対する政府対応について猛烈に批判しています.子供たちを守るために,現状を正確に理解する必要があります.ぜ…

100万ビューを超えていました

アクセス欄を見たら100万ビューを超えていました(驚).留学中であった2004年に,臨床の勉強も続けようと,読んだ論文を備忘録代わりに書き始めたのがきっかけでした.最初のエントリーは「感染性心内膜炎に伴う脳塞栓症例に対し,いつ弁置換術を行うべきか…

しゃっくり(吃逆)を止めたい!

テレビ新潟のディレクターさんからのお願いで,今回は身体のふしぎについて質問が届いた.「しゃっくりはどうして起こるのか?どうすれば止められるのか?」という質問だ. 難しいが,たしかにこれは,神経内科の守備範囲である. まずしゃっくりは何のため…

7-8月のつぶやきから

この2ヶ月のあいだにつぶやいたもののまとめです. リンク先をクリックしてもどうも自動で行かないようなので,リンク先をご覧になりたいときはコピペをしてブラウザで読んでみてください. 突然死との関連が疑われている多系統萎縮症の睡眠呼吸障害では,…

Psychogenic movement disorderの診断・治療をめぐって

2009年10月8~10日,第3回パーキンソン病・運動障害疾患コングレス(いわゆるMDSJ)が東京で開催された.この学会のスケジュールはぎっしり詰まっていて,とくに恒例のイブニングビデオセッション(持ち寄った不随意運動のビデオを見て,その症候をどう表現…

論文に挑戦しよう!

若い先生方といっしょに症例報告や臨床研究をまとめていると,よく「初めて英文論文を書くとき,どうやって勉強をしたらよいのですか」と質問される.通常,最初の英文論文を一人で書きあげるのは至難の技で,ほとんど指導医が書いて,その書き方を教えてあ…