2007-01-01から1年間の記事一覧

続.治せない病気に対し,我々は何ができるか?

ALSについての講義をする機会をいただいた.昨年の同時期にも同じ講義を担当し,その際,感じたことを上記タイトルで綴らせてもらった.その中で「ALSは神経内科医にとってきわめて重要な意義を持つ疾患である」と述べた.もちろんほかにも重要な疾患はたく…

ALSにおける呼吸機能低下は認知機能に影響を及ぼす?

ALSにおける認知機能障害は近年にいたるまで臨床的には軽視されてきた.うつや苛立ち,感情の不安定さといった情緒の変化とともに,貪欲さや猜疑的になるといった行動の変化,さらに知的活動の減少などが報告されている.言語機能に関しても,言語数の減少,…

神経線維腫症 1 型における頚髄圧迫病変

神経線維腫症Ⅰ型(neurofibromatosis type1;NF1,レックリングハウゼン病)はカフェ・オ・レ斑,神経線維腫を主徴とし,骨・眼病変,神経腫瘍など多彩な症候を呈する常染色体性優性の遺伝子絵全身性母斑症である.原因遺伝子は17q11.2に存在し,neurofibrom…

血管炎に伴うニューロパチーでは腓骨神経生検を検討すべき

末梢神経生検は1960年代後半から行われるようになり,現在では神経学的検査法のひとつとしてごく一般的に行われている検査である.生検後の解析としては,電子顕微鏡的検索,ときほぐし法,有髄・無髄線維の定量的解析なども含め行われている.多くの症例で…

寝ながら暴力をふるう人を探せ!

寝ている間に突然,激しい寝言を言う,あるいは殴る・蹴るといった暴力的な行動をとる人がいる.もしくは寝たまま歩きだすといった行動がみられることもある.それらの行動は傍からみると異様であり,家族のなかには「お祓い」や霊媒師にみてもらうことを勧…

心因性の不随意運動をどのように見分けるか?

突然の舞踏運動を呈する患者さんで,家族歴はなく,基底核の脳梗塞や高血糖,SLE,高リン脂質抗体症候群を認めない時,診断として何を考えるだろうか?可能性として変性疾患(ハンチントン病やDRPLAの)孤発例はありうるだろう.ほかには・・・?「心因性のm…

重症筋無力症に合併する自己免疫疾患で頻度の多いものは何か?

重症筋無力症(MG)は自己免疫疾患であるが,他の自己免疫性疾患を合併することを時々経験する.個人的には甲状腺機能亢進症の合併例の経験があるが,実際にはどのような自己免疫疾患を合併することが多いのだろうか?また通常の,自己免疫疾患を合併しないM…

ドラッグ・ラグは解消できるか?(上)

ドラッグ・ラグ(Drug-lag)とは,海外で使用可能な薬剤が,遅れて日本で使用可能になる時間差(time-lag),すなわち「新薬承認の遅延」のことをさす.医薬品の最初の発売国から自国で販売するまでの平均期間を指標とするが,日本におけるドラッグ・ラグは…

眼球運動制限と認知症を伴う若年性パーキンソニズム(PARK9)

Kufor–Rakeb症候群をご存知であろうか?これは1994年,両親に血族結婚を認めるヨルダン人において報告された病気である.発症は12 ~16歳で,パーキンソニズム(仮面様顔貌,筋強剛,寡動)を主徴とし,さらに,痙性,上方視麻痺,認知症も認める.MRIでは淡…

Camptocormia(腰曲り)をどう治療するか?

Camptocormiaは以前の記事に記載したが,ギリシア語のKamptos=bend(曲がる)と Kormia=trunk(体幹)がその語源で,顕著な腰曲がりを指すが,椅子に腰掛けたり,ベッドに横になったりすると腰曲がりが消失したり,両手を壁についたり,片足を椅子に乗せたり…

右に曲がるつもりが,左に曲がってしまう!?(Conflict of intentionsとは?)

「右に曲がるつもりが,左に曲がってしまった」「ドアを開けるつもりが,窓を開けてしまった」「座るつもりが立ってしまった」「うどんをゆでるつもりが,ご飯を炊いてしまった」・・・このような意図に反した行動をとってしまうという何とも摩訶不思議な現…

APP遺伝子重複によるAlzheimer病の特徴

第182回日本神経学会関東地方会にて,本邦初のAPP(アミロイド前駆体蛋白)遺伝子重複によるAlzheimer病症例が報告されたが,今回は,これまで報告されたAPP遺伝子重複によるAlzheimer病家系の特徴についてまとめたい. まずAPP遺伝子重複によるAlzheimer病…

気管切開術は多系統萎縮症における睡眠呼吸障害を増悪させるか?

気管切開術は多系統萎縮症で認められる声帯開大不全などの重篤な上気道閉塞においてNPPVとともに行われてきた治療法であるが,本邦より「気管切開術は多系統萎縮症における睡眠呼吸障害(とくに中枢性無呼吸)を増悪させうる」という報告がなされた.とても…

t-PA使用後の脳出血をMRIで予測することは可能か?

t-PA使用後の症候性脳出血(symptomatic intracerebral hemorrhage)の予測因子に関してはこれまで,臨床所見およびCT所見をもとに検討されてきた.これまでの検討では early CT sign陽性,高血糖,重症度,高齢,治療までの時間,収縮期高血圧,血小板数低…

ALS 研究における失われた10年?

1993年にRosenら(Nature 362: 59-62, 1993)は常染色体優性遺伝形式を示す家族性ALS(FALS)の原因遺伝子SOD1遺伝子を同定した(SOD1-positive FALS).SOD1遺伝子変異の発見は,ALSの分子病態研究を飛躍的に進展させた.これまでの孤発性ALS(SALS)研究は…

SARA日本語版完成

本年1月の当ブログにて取り上げた新しい小脳失調の評価スケールであるSARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)の日本語版が発表された.運動失調症班ホームページよりPDFファイルをダウンロードすることができる. このスケールは何といって…

「寡黙なる巨人」を読んで

私の尊敬する世界的な免疫学者多田富雄先生(以前のブログ記事参照 その1, その2)が,脳梗塞発症後1年間の闘病の記録,およびその後6年間に書かれた随想を加えたエッセイ集を刊行なさった(寡黙なる巨人).脳卒中治療を行う神経内科の若い先生に是非読んで…

高血糖による脳梗塞増悪のメカニズム

アメリカの脳卒中センターで脳梗塞後の管理について勉強をさせていただいたことがあるが,体温と血糖のコントロールをかなり厳重に行っていた.高体温と高血糖は脳梗塞サイズの増大をもたらすことは既に知られたことではあるが,徹底したコントロールが予後…

新しい抗パーキンソン病薬コムタンと「持続的ドパミン刺激(CDS)」という考え方

「コムタン」は日本で初めてwearing-off現象の改善に対し適応が認められた末梢COMT阻害剤である.先日説明会を聞いたのでまとめておきたい. まずコムタンは必ず既存の抗パーキンソン病薬であるレボドパ・カルビドパまたはレボドパ・塩酸ベンセラジド合剤(D…

Sirtuin 2阻害剤はパーキンソン病・多系統萎縮症の治療薬となるか?

パーキンソン病や多系統萎縮症では,α-synucleinを構成蛋白とする封入体が形成され,それぞれLewy小体,glial cytoplasmic inclusionと呼ばれている.nativeなα-synuclein蛋白が発病の過程において,その立体構造を変え(misfolding),オリゴマーを形成し(…

お勧めの統計学の本

後輩のレジデントに統計学のお勧めの本について質問された.正直に言うと統計学は得意ではなく,今でも四苦八苦している.昔から苦手な科目や分野だと,どんどん参考書ばかり買いこむ癖があるため,統計学に関するたくさんの本を持っているが(苦笑),その…

Pull test(どうやって姿勢反射障害を見ればよいのか?)

学生や神経内科学をはじめて学びにきた前期研修医の質問には時々答えにつまることがある.たとえば「ミオトニアは不随意運動ですか?」「retropulsionはどうなったら陽性なんですか?」という具合だ.前者は誘発して起こる現象だし,「神経症候学(平山)」…

多系統萎縮症(MSA)の睡眠呼吸障害・咽喉頭所見の特徴

日本で最も頻度の高い脊髄小脳変性症である多系統萎縮症(MSA)では,しばしば睡眠呼吸障害を合併し,睡眠中に突然死を来たしうることが知られているが,その機序については十分明らかにされていない.今回,新潟大学から,MSA の睡眠呼吸障害の特徴と,その…

多系統萎縮症でも病的泣き笑いが生じる!?

少し会話しただけで笑いが止まらなくなってしまう多系統萎縮症(MSA-C)の患者さんを経験したことがある.「病的笑い」がMSAの症状のひとつとして出現するものなのかPubMedで調べてみたが,そのような文献を見つけることはできず,単なる笑い上戸なのだろう…

アセチルコリン受容体抗体は自律神経障害を起こす!

まず自律神経系の節前,節後線維における伝達物質についておさらいしたい.交感神経,副交感神経とも,神経節におけるシナプス伝達はアセチルコリン(Ach)によって行なわれている.交感神経の節後線維末端からはノルアドレナリンが支配する臓器に対して分泌…

「神経内科」の標榜を守れ!

「神経内科」を標榜できなくなるという話が進行している.以下,朝日新聞(2007年05月16日)の記事を抜粋する. 厚生労働省は、医療機関が名乗ることができる診療科を、現在の38科から20科程度に再編する方針を固めた。細分化して患者にわかりにくくなっ…

脳梗塞治療に水素が効く?

5月8日の毎日新聞に興味深い記事を見つけた. <活性酸素>水素使い効率よく除去 日医大で成功 水素を使って、体に有害な活性酸素を効率よく除去することに、太田成男・日本医大教授(細胞生物学)らが成功した。脳の血液の流れを一時的に止め、活性酸素を大…

ノーブレス・オブリージュの崩壊

最近,新研修医とともに病棟診療に当たっているが,ふと休日も睡眠時間も削っての勤務をどのように感じているのだろうかと思うことがある.医師の仕事については最近ようやくその過酷な勤務環境が報道され,病院・医療システムの破綻が知られるようになった…

Robert H Brown教授によるALS研究レヴュー

ボストンで開かれた第59回アメリカ神経学会(AAN)に参加した.印象に残ったplenary sessionのうち,ハーバードMGHのBrown教授によるALS研究の進歩に関するレクチャーを取り上げたい.彼は家族性ALSにおける知見をどこまで孤発性ALSに応用できるかというスタ…

孤発性クロイツフェルトヤコブ病(CJD)における検査の感度

孤発性CJDの生前診断は,臨床経過に加え,脳波における周期性同期性放電(PSD)や頭部MRI所見を参考に行っているのが一般的と思われる.今回,孤発性CJDの生前診断目的に行われる種々の検査の陽性率に関する研究が報告された.この研究では,各検査の感度の…