「病的泣き笑い(pathological laughing and crying;PLC)」は,抽象的・概念的な表現であり,その実体は案外分かりにくいものだが,「神経症候学〈1〉
ところが,今回,Harvard Medical SchoolよりMSA-CにおけるPLCのケースシリーズが最新号のMov Disordに報告された.剖検にてMSA-Cと診断を確定したdefinite MSA 1例でPLCを認めたほか,retrospectiveに検討したprobable MSA 27例のうち9例でもPLCを認めた(よって10/28=36%).10例中「笑い」のみは5例で,「笑い+泣き」は5例であった.もしこの報告が本当ならMSA-Cでは過去の認識とは異なり,実はPLCが多いということになる(著者らはsample sizeが小さいことにより割合が高くなるsampling biasは起こりうると言っているが,同時に,PLC陰性の18例にも未発症者がいるかもしれず,もっと高い可能性もあるとも言っている).一方,MSA-CにおけるPLCの病変部位については3つの可能性を挙げている.①両側性のcorticobulbar tract,②大脳基底核,③小脳および小脳と接続するシステム,である.著者は剖検例の結果やMSA-PでPLCを認めないことから①と②については否定的な立場で,③小脳が無意識下の表情コントロールに関与しているという仮説を第一に考えている.
本当にMSA-CでこんなにPLCの合併が多いのか,もしくはPLCのメカニズムに小脳が関与するのかなどなかなか論議を呼びそう論文ではあるが,今後,MSA-Cでは注意深くPLCの有無を確認する必要があると思われた.
Mov Disord 22:798-803, 2007
神経症候学〈1〉